| その昔、風や波の音、虫の声、雨の匂いを敏感に感じていた日本人。その神経は今これ以上は荒れぬ程ざらつき、右手の携帯を注視するポーズが基本姿勢。100年後わが民族の骨格は確実に左右不均衡になるぞ。だが、インタビユーの場に赴けば、眼前のブルース.ヒユーバナー氏、ジヨナサン.カッツ氏、物腰柔らかく、話しながら話題の行き先を知的に見つめるその表情の、繊細かつ柔軟なことか。 |
| この二人の米国人ミユージシヤンの印象から語り始めたのは、このデユオ作品と彼等から発せられるオーラが、見事に一致していたからだ。ブル−ス.ヒユーバナーはカリフオルニア出身、外国人として初めて東京芸大邦楽科の修士課程を尺八専攻で修了。もとはフルート、サックスを吹き、本作では尺八とフルートを担当する。在日17年で奥様は日本人。対するジヨナサン.カッツは、ニユーヨーク出身で在日11年のピアニストだ。マックス.ロ−チ、リー.コニッツ、レイ.ブラウン、ルー.タバキンらと共演。自己のピアノトリオによる作品をリリースし、国内ツアーも多い。 |
二人の共通点は、そのキヤリアの初期に各々日本を訪れていること。そして不思議な縁としかいいようがないのだが、その後ある期間を経て再び日本を訪れ、ミユージシヤンとして出会い、ジャズ、ラテン、ワールドミユージックのグループ『カンデラ』を結成したことが、このデユオの発端なのだ。ピアノと尺八のデユオ。さてあなたはどういう音を想像されるだろうか。抹香臭いサウンド?アメリカ人に吹く尺八なんて。
そう思いました?違うのだ。説教臭くも、暗くもない。ブル−スの学んだ琴古流という流派の特徴かもしれないが、フルートに近い伸びやかな奏法、自然でたおやかなサウンドは、ジヨナサンのクリアな音色とブレンドされ、気高く静謐な音楽を作っていく。<アフロ.ブルー><チムチム.チエリー>といったコルトレーン曲、尺八の基本の五つの音を用い曲名にもした<ロツレチリブルース>、いずみたく、永六輔による名曲<おんなひとり>、感動的なライズアバブ>、そしてジャズフアンを意外なテンポとアレンジで驚かせるに違いない<朝日のように爽やかに>など、多彩かつ明快な選曲。
『日本的』を押しつけず、でも日本に来て日本で出会った彼等にしか生み出せないサウンド。二人ともフランクでジョーク好き、知的だけどジャズマン的な駄洒落(しかもバイリンガル ジョーク!)連発のファンキーガイだ。その人柄は隠し様もなく音に出る。作品は<吹き来る(Zen In)>で始まり、<吹き去る(Zen Out)>で終わる。それもアート.ぺッパーの<ブルース イン > <ブルース アウト>のもじり。さて、あなたの想像とどれくらい誤差があるか。まずは新作『ブライトワンズ、ダークワンズ』を聴いて頂くしかないだろう。 |
| (都並清史) |